いつの間にか合わせの隙間に滑り込んだ手がさわさわと胸に巻いたさらしの上を這う。
いや、そんな可愛いものじゃありませんね。
がっつり揉んでます。
ええそりゃもう、がっつり。
しかも人が密かに気にしてたことをあっさりはっきり言ってのけましたよこの人。本人目の前にその感想ってどうなんでしょう。
暗闇にも目が慣れてきたんで、心底残念そうに眉を下げてるのも丸見えなんですけどね。
微……。
「こ……んの助兵衛がっ!!」
やっぱりこいつは今すぐ殺りましょう!
突然の暗転と出来事に最初はわからなかったけれど、どうやら片手で私の両手首を押さえ込んでいたそいつは、力ずくで振り払うと思いの外すぐに私の上から飛び退いた。
「ちょっとくらいええやんけち」
「ええ良いですよ、御代はその首一つで許しましょう」
「うわ、またえらいたっかい乳やなーさらしの上でそれは鬼やろ。せめて生乳揉ませぇ生乳」
「乳乳言うなっ」
あーもうこいつ何!
飄々としてて、胡散臭くて、目的不明で、でも殺気も敵意も見えなくて、こうして拾い上げた真剣振り回してても苦もなく避けるそいつはやはりかなりの手練れなんでしょうけど──
ただの馬鹿にしか見えませんっ!
「……なんなん、やっぱ自分アレ?副長はんに貞節でも誓てんの?」


