飼い猫と、番犬。【完結】


その頬に指を滑らせると、沖田はぴくりと肩を竦めて手を引いた。


滑らかな手触りのそれは、まるで幼子の肌にでも触れているようで気持ち良い。


食べてもええかな。



「ち、違いますっ!助けてくれたのに追い出すようで、その……」


慌てふためき目を游がせる沖田に一歩近付けば、そいつもまた一歩後退る。


小さく開いた格子窓から差し込む月明かりが、視界の隅で少し眩しい。


捉えた視線の先で、沖田の目にじわりと熱が灯る。



「……だって、まさか本当に来てくれるとは思わなくて、その、だって……本当に怖くてっ、まさか、だって、平助が……っ」

「嘘ウソすまんて。はい、どうどう」



虐め過ぎてもーた。


再び混乱し涙を浮かべたそいつに吹き出して、その身をそっと引き寄せた。


女のくせに上背があるのが玉に瑕だと思うが、それでも首筋に頬を寄せるとふわりと沖田の匂いが香るから。


最近はそれでも良いかとも思ってる。



「流石に今の自分とって食う程鬼畜やないで。誰かとおった方が気ぃ紛れるんやったら帰ってくるさかいに待っとき」


俺も大概毒されたものだ。


でも今こいつが無意識に漏らした『本当に来てくれた』という言葉は、即ちあの時僅かにでも俺の事を考えたということ。


それに単純に喜びを感じた自身にも笑えるが。


やっぱり、嫌じゃなくて。


当初の目的などどうでもよくなっている俺もまた、他の幹部連中と同じ穴の狢、らしい。