飼い猫と、番犬。【完結】



「あの人とはそーゆーのじゃありませんからっ」


もしかして、さっき一緒にいるのを見ていたのだろうか?


平助は以前からあの人を嫌っていた。それなら納得出来る。


あんなところを見られていたかもしれないと思うとこれまた無性に恥ずかしいけれど、一先ず放して欲しいとの意思を込めて、平助の腕にそっと手を添えた。


「その、山南さんの事で落ち込んでいた時にちょっと助けてもらって、それだけ……です」

「何であの人なの?一くんだっていた筈じゃん」

「勿論一くんもですけどっ、……あの人も、そんな、悪い人では……」


あの日を思い出して、一瞬、声が大きくなってしまった。


必死に否定しかけたそのばつの悪さに、今度はしどろもどろと声が萎む。


最初山崎の事を毛嫌いしていたのは私の方なのに、懐柔されつつある事が後ろめたくて、つい黙ってしまった。


そんな私に何を思ったのか、平助の拳がぐっと握られる。



気不味い沈黙だった。





「……好き、なの?」

「ちっ、違いますよっ!そんなのある訳ないじゃないですかっ」


ないない絶対ないっ!


思わず熱が湧いて、強引に腕を押し退け振り返えればすぐそこに見開いた平助の目があった。


その距離にハッとして黙り込んだ私に、平助は微かな光を滲ませた目を悲しげに揺らした。




「……俺だって側にいたかった。側で、総司を支えたかった。ずっと……ずっと見てたのに、そんなの、狡いじゃないかっ!」