しとしとと鬱陶しい走り梅雨が過ぎ去ると、今度は真夏のような日差しが降り注いだ。
本格的な梅雨を目の前にして、京の空は爽やかに晴れ渡っている。
その日も、非番だった私は一人縁側に座り、心地良い風に吹かれながら日の匂いと温もりを移した洗濯物を黙々と畳んでいた。
「……あふ」
指先に触れる暖かさについ欠伸が漏れる。
暑くも寒くもない、束の間の良い季節だった。
「総司!」
目尻に溜まった涙を拭っていると、ふと聞き慣れた、けれども懐かしい声が背に聞こえた。
トタトタと板間を駆ける軽やかな足音に頬が緩む。
「平助!おかえりなさい!」
「ただいまっ!」
けれども振り向き様に片膝を付いて立ち上がりかけた私目掛けて、久し振りに見る人懐っこい笑顔がそのままの勢いで突っ込んでくる。
え、ちょっ待っ……!?
流石にあの勢いの男の体をこの体勢のまま受け止める自信はない。
板間に転ぶのだけは勘弁と咄嗟に身構え固まる。
が、来る筈の衝撃は来なかった。
「……危ないだろう」
「わ、わかったから放してっ」
呆れた顔の一くんがその後ろに立っていたから。
それに安堵しつつ、久々に揃った元同室の顔触れにまた顔が綻ぶ。
「一くんも、おかえりなさい」
そう声を掛けると、一くんは衿を掴まれもがく平助の後ろで少しだけ口角を上げて、穏やかに笑った。


