目的は勿論隊士の募集だけど、日野にも少し寄るのだと聞いた。迎えてくれる家族はいないが私だって故郷は懐かしく思う。帰りたくない訳ではないのだ。


でも土方さんと道中共にするのもやっぱり気が引ける。今のあの人はよくわからないから。


だからこれで良いとは思うんだけど、同室だった二人がいないというのはやっぱり心細い。






「子供のようだな」


うつ伏せになってぼーっとそんなことを考えていたら、いつの間にか布団を敷き終えた一くんの手が降ってきた。


「飴玉くらいは買ってきてやろう」


くしゃりと髪を混ぜるそれは完全に私を子供扱いしてる。


同い年の癖に。



「……一人で大丈夫か?」


けど、そこはやっぱり心配性の一くん。


私を気遣う一言に膨れかけた頬も元通りになり、自然と弱音も消えていった。


「まぁ左之さん達もいますからね。それに私ももう子供じゃないですし」

「そうか、なら飴玉はやめておこう」

「え、それとこれとはまた話が別です」


飴は欲しい。


つい勢いよく起き上がると、一くんはふっと小さく鼻で吹き出して。そこで漸くからかわれたのだと気が付いた。


「なら買ってこよう」


……なんかすっごく悔しいんですけど。


あまり見れない一くんの笑みがこれまた羞恥を誘って、思わずふいと顔を背けた。


それに、だ。
一くんは朝には江戸に向けて出立する、そろそろ休ませてあげた方がいい。


「……ではそろそろ戻りますね」


そう理由をつけて強引に話を打ち切り立ち上がる。