飼い猫と、番犬。【完結】




翌朝、足の重い私が逆に手を引かれるようにして戻った屯所では、近藤さんと土方さんの三人だけの短い話がなされた。


他の皆は私の腫れた瞼を見ると、複雑に顔を歪めつつも黙って肩を叩いてくれた。


本音を言えば、ここまで来てもまだ心の底では逃げて欲しかったと思ってる。切腹以外の処分を望んでる。


でも言い渡されたのはやはり切腹で。


加えて、考えもしなかったことが悲痛な面持ちの近藤さんから伝えられた。



「……私が……介錯を?」



嘘だと思った。


だけど山南さんは初めから追って来た人にと決めていたらしい。


ならどうしてあの時言ってくれなかったのかと思う。直接ならば嫌だと突っぱねたのに、軟禁され面と向かって話すことも出来ない今、もうそれも出来ない。


何より昨日のあの顔を見たあとだ、それが最後の願いだと言われれば、私には断ることなんて出来なかった。




部屋の真ん中には白の小袖に浅葱の裃姿の山南さんが居住まい正しく座していた。


その下には浅葱の布が敷かれ、以前着ていた揃いの羽織を思い出す。


不吉なものを着ていたと、今更ながらに吐き気がした。



「……沖田総司です」


流れに則り一礼した声が震える。


今から私がこの人を殺すのだ。


そう思えば真っ直ぐ顔を見ることすら出来なかった。