どの口が言いますか。
思わず半目になった。
監察としてのこいつの力は信用に足るものだろう。そこについては心配することもない。
ただ同族嫌悪というものなのか、ふんっと鼻を鳴らすそいつが少し可笑しくて、呆れながらも鼻で笑ってしまった。
「貴方も同じでしょうに」
「俺は潔いからええねん、あんなむっつりと同じにせんといて。さーそれよかそろそろ稽古や、顔洗てき。涎、ついてるかもしれへんで?」
繋がれたままの手に違和を感じなかったのは寒さ故か。
後悔した時にはもう既に遅くて、気づけば強引に引き寄せられた私の頬に、湿った生暖かいものが触れた。
「俺の」
「ーーっ!この変態っ!!」
舐められたっ!
目の前でペロリと舌を出す山崎に平手を放つも、軽やかに後ろへ跳んだそいつはケラケラと楽しげに笑って屋根へと上がった。
「ほな俺は先に道場入っとくさかいに」
さっきまでの真面目なあいつはどこへ消えたのか。少しでも見直したところでこれだから腹がたつ。
やっぱり十分いけ好かないすけこましですっ。
その黒い背中が見えなくなる前に踵を返し、早足で歩を進めながらも生々しい感触の残る頬をこれでもかと擦る。
そこがじわりと熱を持ったのはきっと、その所為だ。
……さっさと洗ってしまいましょう。
頬を擦る手に少しだけ力を籠めて、私は更に足を早めた。


