飼い猫と、番犬。【完結】


後ろを振り返れば、そこにあったのは珍しく笑みのない山崎の顔で。何かしらの理由があることは明白だった。



「……何があるんです?」

「これ」


声を抑えて問うと、手首を掴んでいた山崎の手がするりと滑り、掌を握った。


さっき伊東さんにされたのと同じ握り方、そして山崎も同じく伊東さんと交わしていたものだ。


やはりあれは単純に手を取られただけじゃなかったらしい。


握った手を軽く振って私に視線を戻した山崎は、その手を離すことなく言った。


「これはな、簡単に言うたら異国の挨拶や」

「異国の?」


そこから出てきた意外な言葉につい聞き返してしまう。


薬を作れることもそうだけど、こいつはその普段の軽さからは想像出来ないくらいに色々なことに通じていると改めて思う。


よくよく考えてみれば、目の前の相手だけに気を払えば良い私みたいなのとは違って、沢山の事を考えなければならないこいつの仕事は、それなりに頭が良くなければ出来なさそうだ。


加えて、体術も剣術もそこらの隊士の比じゃない。


こいつはちゃんと教えを学びとって自分のものにしている。そこにはそれなりの努力があったんだろう。


悔しいけど……凄い。




「そや。気にならへんか?」

「……気に?」