「ほな次行こかー」


一人軽やかに暖簾を潜るそいつのあとに続いて表に出たのは良いけれど。


「……ちょっと、どうして私が荷物持ちなんですかっ」


買ったばかりの薬種を包んだ風呂敷を持つのは私一人。


私の物なんて一つもないのにどうして当然のように手渡されなくてはならないのか。


「えーだって今日はその為に連いてきてもろたんやもん。別に重ないやろ?」

「そりゃ重くはないですけど……」


これじゃまるで主人と小姓だ。


数歩下がって歩く私を振り返った山崎は、人差し指を唇に添え片方の口だけを器用に上げた。


「恩には恩で返してもらわんと」


糞ぅ……!


そう言われれば何も言い返せない。


秘密を握られたばかりではなく、借りまで作ってしまったことが運の尽き。


確かにあの時は助かった。
だけど今、悪い予感しかしないのは気の所為なんかじゃない筈だ。



「持てば良いんでしょう持てばっ。さー早く次行ってください、さっさと終わらせますよっ」


ひくり頬を引きつらせ、鼻息荒く歩き出す。


「そっちちゃう、次はあっち」

「ぐっ!?ちょ!衿引っ張るの止めてくださいよね!」


何だかんだで結局いつもこうして丸め込まれている私がなんか物凄く、ヤだ。