ようはあれだ。


組をあげての大捕物。助勤として参加せざるを得なかったものの、まさかの当たりを引いて動きまくった結果、堂々と皆の前に立てないコトになっている──と言うことらしい。


そら笑うやろ。


拗ねるそいつが面白可笑しく、膨れた頬に指の背を這わせる。


「阿呆、せめて副長はんには言うとけ」

「……そんなの、言える訳ないじゃないですか」


普段から特別扱いを受けるのを嫌う節のある沖田。平時ならいざ知らず、流石に今日ばかりは言い出すことが出来なかったのだろう。


決まりが悪いように目を逸らすそいつの言いたいこともまぁわからないでもないが。


「ほな、次からは俺に言い」


一人で抱え込むばかりではどうにもならないことだってある。


周りに知られたくないことなら尚更だ。


「っ、ちょっ!?」


いつもより距離の近いその体をひょいと抱き上げれば、沖田が素っ頓狂な声をあげる。


「どうせ体調もあんま良ぉないんやろ?見られとうないんやったら連れてったるさかい、大人しゅうしとき」


不本意そうではあるものの、初めてこいつから頼ってきたのだ。ここは一つ、十二分に甘やかしてやることにする。


そうにっこりと微笑みかけるとぐっと押し黙った沖田に満足して、既に咆哮の止んだ階下へと下りていった。