「……え……?」



どさりと崩れ落ちた男の向こうで沖田が目を大きく見開く。


月明かりの所為だろうか。
久々にゆっくり眺めるそいつの顔はいつになく白く見えた。


「え?やない呆け。何簡単にやられとんねん阿呆」


そんな沖田に近付いて強引に刀を奪うと、倒れた男の背から心の臓を一突きする。


こういう場合、確実に殺しきれていないと後々面倒になるからだ。


ついでに首の後ろに刺さったままの飛び苦無を返してもらえば、生暖かな感触が頬に跳ねた。


此処を狙えば大抵の人間はほぼ即死。


まぁ後ろ傷を恥とする武士とやらにはあまり一般的ではないのだろうが、俺達からすれば割りと狙いやすい急所の一つだ。


袖で雑に頬を拭い、ずるりとへたり込んだ沖田に溜め息を漏らして、仕方なく俺も膝をつく。


「気ぃでも抜けたか」

「……いえ、少しくらくらして」


実はまた体調でも崩しとったんか?


「見せてみ」

「ーーっ、や!い、良いです有り難うございます!私は大丈夫ですから早く下の助けに向かってくださいっ」


流石に人間死にかけた直後は素直で大人しいものだと思ったのに。


もしや熱でもあるのかと手を伸ばしたところで、突然何かにはっとした様子の沖田が俺を避けるように背を逸らした。



……なんやねん急に。