飼い猫と、番犬。【完結】




「ほらほら、受けるだけ?」

「あの沖田もこれじゃたかが知れてるね」

「さっきまでの勢いはどこにいったのさ」



いたぶるように執拗に繰り出される刀。その一撃一撃の重さに私はただいなすしか出来ずにいた。


小さな格子窓からは逃げ切らない熱気に掌が汗ばみ、刀が滑る。


それでなくとも何人もの相手をしたあとなのだ。どこぞに隠れていただけのこいつとは疲労の具合が違う。


身の丈は大して変わらないけれど、見るからに私より筋肉のあるがっちりしたそいつと打ち合う度に、私の体はじりじりと後ろへ追い詰められていく。


でも、だからと言って簡単に諦める訳にはいかない。


それは即ち死、なのだから。




「……る、さいっ!」

「良いねぇ、もっと足掻きなよ」


渾身の力で刀を払った私に、男はまだまだ余裕綽々といった様子でくつりと笑う。


心底嫌な奴。


こんな男に負けてなるものかと心は叫ぶのに、すぐ様畳を蹴ったそいつの斬撃を受けた腕が震える。


既に体力は限界に近い。
歯を食い縛れば食い縛る程に肺に空気が入ってこなくなる。


いなしきれなかった刃が時折肉を裂いて、益々私から力を奪っていった。



視界が、掠れる。




──こんな奴に……っ!





「他愛ないね、もう良いよ」