…え?
今、一緒に帰ろうって言わなかった?
「あ、うん。いいよ」
頭は冷静だけど体が体温を保てない。
耳まで面白いくらい真っ赤。
これ、家に帰るまで持つのかな…
って!!
私ってば、傘…
「あ、私、傘持ってきてないんだけど…」
「あー、いいよ、入れてあげるから」
普通の顔でサラッと言う松田君はどんどん歩いて行く。
い、いやいや、入れてあげるからって…
捉え方によっては相合傘。
というか、そうとしか捉え方がないよ…!?
「おーい、早く歩かねーとおいてくぞ」
優しいから、そう言いながらも歩くペース合わせてくれる。
やっぱり、私は松田君の事が好きなんだ。
5歩に一回のペースで触れ合う、私と松田君の肩。
…肩が触れ合うというより、私の肩と松田君の腕かな。
やっぱ身長高いなぁ…
「家、ここからどこ?」
気がついたら、家の目の前の交差点。
普段は早く帰りたいから道のりが遠く感じるけど、今日はとても短く感じた。
「あ、もうすぐそこだよ!
ありがとう、雨なのにここまで…」
「いいよ、全然。
部活なかったから動き足りないんだよね」
「そっか! じゃあ、ばいばい!」
「じゃあな」
そういって、私の前から去っていく松田君。
今まで、少しだけ距離が縮まった気がしたのにまた遠い存在に戻っている気がして…

