雨が降ったある日。

「ねーえー、綾莉ー
 部活休んで帰ろーよー…」

傘を忘れてきた私は、駄々こねて綾莉にくっついていた。

「いいから帰りなさい! 傘ないなら私の使っていいから!
 私これから階段で走んなきゃだから、ばいばい!」


サッカー部は雨の影響により部活中止。

しかも、よりによって委員会がある日なので、部活以外の用事で校舎にいてはいけない。

つまり、帰るか外で待つか。


仕方がないから、綾莉の傘で帰ろうかな…


「あ」


聞こえてきたのは、低くて透き通る大好きな声。


振り向くとそこには、松田君がいた。


「ま、松田君!? なんでまだ校舎にいるの?」

「俺、体育委員会なんだよね。 めんどくさいことに。」


そう言って、あははと笑う松田君。


「そうなんだ… もう終わったの?」

「うん、終わったよ。 ってか、雨やんでないんだね」


あ… だから私外に出たくなかったんじゃん。


「あー、そうなんだよね…」


「あ、もうちょっと待っててもらってもいい?」

「いいけど…」


そう言うとすぐに、松田君は走り去った。

3分もしないうちに、松田君は戻ってきた。


「一緒に帰らない?」