「ふ、藤野君…」

「はよ。 早く行くぞ」


言葉はぶっきらぼうだけど、ニコッと笑ってくれた。

よかった…いつもの藤野君だ。


「うん。 ねぇ、あのさ…」

「ん?」


立ち止まって話を聞いてくれる藤野君。

自然と、家での苛立ちがおさまってくる。


「わ、私も…藤野君のこと、す…すき。」

語尾が小さくなってしまったけど、伝わったと思う。


「うそ、だろ?」

藤野君は目を見開いている。

「本当だよ。 昨日、すぐに言えなくてごめんなさい…
藤野君が、その…す、好きって、あまりにもビックリしたっていうか……わっ!?」

ここは通学路。 きっとクラスの人も、同じ学校の人も見ていると思う。

なのに…

そんなことも気にせずに藤野君は私を抱きしめてきた。


「好き。あーもう、本当好き。」

「へへっ、私も好きだよ? 藤野君より好き。大好きっ!」


一度は離してくれたのに、私が裏路地でもう一度藤野君に飛びついた。

「じゃあ俺は、愛してる。」


あ、あい…!?

それって夫婦とかの人が言うんじゃないの!?


「あれ、美夏は俺のこと愛してないのか…そっか。」

悲しそうに私から離れていく藤野君。

「ま、待って待って! あ、愛し…てる…よ、私も」

恥ずかしい…

さっきまで悲しそうにしていた藤野君の顔は、意地悪な笑顔でこっちに向かって歩いてきた。

「ん」

ん?
なに?

「手、繋ご」

あ、ああ…

って、手!?


なんで、そんなにキミは余裕な顔なの…?