いつもなら長い帰り道。
でも藤野君と帰っているときはすごく短い。

「じゃあね、ありがとう。」

そういって、家のエントランスに入ろうとした時。

「美夏って、携帯持ってるんだろ?」

携帯…?

「え、持ってるけど…」

「メアド、交換しとかね?また帰る時とか不便だろ。」

そういって、ポケットから携帯を取り出した。

「うん、いいよ!」

私もカバンから携帯を取り出す。
そして、アドレス交換をした。

「いっぱいメールしてもいい?」

「おう、いいよ。」

「本当に?いーっぱいするよ?」

「そしたら、いーっぱい返してやる。」


こんな会話、してみたかったんだ…

にこりと笑って、じゃあねっ!と言う私に、左手をあげた藤野君。
駅の方向に向かって歩き出した背中は大きくて…
近づいていった心の距離は、また離れて行っちゃうのかな…


エレベーターにのって、早速メールを開く。

[もう駅ついた?]

返事は割とすぐにくる。

[おー。今電車待ってるとこ。美夏はもう部屋か?]

返信が来るたびに、にやにやしてしまう。
なんで今までメールってこと考えなかったのかな…

自分の部屋のベッドにぼふっと飛び込んで、返信を打つ。

[うん、部屋に着いたよ。課題とかやる気にならないねー]

幸せ…

好きな人とメールでやり取りできるなんて、こんなにもし幸せなんだ。


そういえば、綾莉どうなったんだろう…