後日。

たまたまテニス部とサッカー部の部活が休みになり、私は綾莉と帰ることになった。

帰りの支度をしていると、松田君がちょうど校門を出るところが窓から見えた。

「松田く……ん」

最初は手を振って名前を呼んでいたけど、門を出たところで他校の女子と待ち合わせをしていたみたいだったので、結局呼べなかった。


「あっ……」

松田君がこっちを振り向くと思って、とっさにしゃがみ込んだ。

そしてそのまま、泣き崩れた。


「美夏!? どうしたの!?」

「松田…っ、くんっ、がっ……、他のっ…、学校の人…とっ待ち合わせて…っ、帰ってた…っ」


綾莉は、おもちゃを買ってもらえない幼稚園児のように泣いた私のそばに、ずっといてくれた。




「…落ち着いた?」

「…う、うん…」


「とりあえず、カフェ行こう! 駅前のとこね!
 おいしいパフェあるんだよ!」


綾莉、本当にありがとう…


ありがとうって言葉は、たった5文字。
だけど、素直に言えない。

綾莉にも…。

いつか必ず、たっぷり言うからね。