「だって、この街にいるかもしんないんだよ、犯人……」

「ね、本当に信じられないよねぇ……」

「……ラ死体だなんてさ……」
 

後ろの方で、数人が『事件』の話をしていた。

数か月前から、この近辺で起こっている連続殺人事件の噂だった。


 
平和な片田舎で突如として起こった惨劇。

…チープな言葉だが、チープだからこそ的確とも言える。


こういう身の毛のよだつような事件というのは、もっと遠くの都市で起こるべきだというのが、ここら辺の住人の見解だ。


なるほどバラバラ殺人は、この街に何十年も暮らしている人には想像もつかない、恐ろしい事件だった。
 

被害者は、ホームレスの老人にはじまり、チンピラ風の男、サラリーマン、主婦、女子大生など……要するに無差別である。


死体が見付かる度に、マスコミが押し寄せてくる。
 

そして死体は、必ずバラバラに切り裂かれていた……。


(……むぅ)
 

しかし七海子は、その会話を頭の中から追い出すことにした。


半ば無理矢理、眠りにつく。
 


だから彼女は、担任の先生が来る時間がいつもより遅かったことも、



先生の後ろにもう一人いた事も、知らなかった……。