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「じゃあ、また明日」



あれからやっと健から離れて、あたし達はマンションの部屋のドアまでやって来た。

健は兄貴に言われた通り、ちゃんとそう言ってあたしをドアの前まで送ってくれている。


…なんか、さっき抱きしめられたせいか凄く変な感じ。

まともに健のことが見れないじゃん。

どうしてくれんだコノヤロー。


そう思いながらも、あたしも健に「ばいばい」って手を振った。



そして、帰っていく背中に、素直に言う。



「送ってくれて、ありがとね」



あたしがそう言うと、健は優しく笑って「いいよ」って言った。


あぁ、やっぱり変な感じ。

いつもの健と違うから。





そんな健を見て、あたしは部屋の中に入った。

そして玄関に入るなりその場にしゃがみこむと、思い浮かべるのはさっき健に抱きしめられた時のこと。



あたしをからかってるとか、そんな雰囲気じゃなかった。


健に抱きしめられた感触がまだ身体に残るなか、あたしは自分の頭をグーで何度か軽く殴る。



「早く忘れろ。早く忘れろっ…」



そしてそれだけを繰り返し唱えてみたけど、健からの告白が頭に染みついて、しばらく離れることはなかった…。