あたしはそう言うと、美桜から翔太に、ジロリと目を移す。

けど、あたし達の会話を聞いて、彼は「あの時の世奈ちゃんは可愛かったよ」とニコニコ笑うだけ。

だからあたしはあの時の恥ずかしさが蘇ってきて、思わず顔を赤くした。


…あの時。翔太に、教室のど真ん中でキスをされた日。いったい何があったのかというと。

あの時も今と同じ昼休みの教室で、あたしは美桜と二人で雑談をしていた。

ただ一つ、今と違っていたのは後ろに翔太がベッタリ引っ付いていなかったこと。

しかし、雑談の途中で、あたしは何故かふいに翔太に呼ばれた。


『世奈ちゃん、』

『うん?』


その時の翔太は、珍しく男子の集団の中にいた。

別に同性の友達がいるのは知ってるけど、結構レアな光景だったと思う。

そして何故か翔太はいったんそこから抜けると、あたしに声をかけてきた。

…それは良いんだけど、その時に少し気になっていたのは、さっきまで翔太が輪の中にいた男子達からのたくさんの視線。

あたしが翔太の方を向くと、翔太が「おいで」って言うから素直に彼に近づいた。

しかし、近づいたその瞬間…


『…!?』


突如、あたしは目の前の翔太にぐっと腕を掴まれて、強く引き寄せられた。

その突然の出来事にビックリする暇もなく、あたしは……気がつけば。

教室のど真ん中で、皆が見ているその目の前で、翔太とキスをしていた。

…というわけだ。