しかも兄貴は、洗面所で自身の髪を整えながら、言った。



「いや、アカン言うてるやろ!だいたい、誕生日プレゼントくらい俺が金出したるやん。何買うねん」

「ちーがーうーの!あたしがお金出さなきゃ意味がないの!兄貴が出しちゃったら、兄貴から翔太へのプレゼントになっちゃうじゃん!」

「……言わんかったらわからへんがな」

「っ、だからさぁ~!」



翔太のためを思って、さっきからずっとこの調子でしつこく頼んでいるのに、兄貴は絶対に首を縦に振ってくれない。

それどころか兄貴は洗面所を出ると、リビングに置いてある自分の財布を手にとり、一枚のお札を取り出すと、あたしに言った。



「ん、」

「…?…何これ」

「何って、千円。今日友達と遊ぶんやろ?その金やん」

「あー……って違ぁーう!」



あたしは兄貴のハンコが欲しいの!

(千円は貰うけど)


しかしその願いは結局叶わず、やがて兄貴はいつものように仕事に出掛けてしまった…。