リビングのカレンダーが、風で揺れる。
3月18日。
来月のその日は、翔太の誕生日だ。
「ね~お願い!」
「アカン」
「兄貴、一生のお願い!許してくれたら何でもするからさぁ!」
日曜日の朝。
あたしは、マンションで仕事支度をしている兄貴に、何度もそう言って両手を合わせる。
さっきからいい加減しつこいあたしに、そろそろ兄貴も呆れ顔。
その理由は…
「バイトがしたいの!来月は翔太の誕生日だからさ、いいものあげたいじゃん!でも今のあたしが持ってるお金じゃ全然足りないし…
だからお願い!この履歴書にハンコちょうだい!」
「…、」
そう。
人生で初めての、「バイト」だ。
翔太のために何とかしてお金をバイトで稼ぎたいけれど、なのに肝心の兄貴が全然首を縦に振ってくれない。