「よっし!」

「…っ、もーズルい!」

「何が」

「ちょっとくらい手抜いてくれたっていいでしょ!」

「抜いてるよ。お前が弱すぎんだろーが」



健は悔しがるあたしにそう言うと、「ほら」とまたあたしにボールを渡してチャンスをくれる。

試合の始まりは全部、健がハンデとして「世奈からでいいよ」と言ってくれたのだ。

でも、さっきから全て…ふいをつかれては健にボールを奪われ、シュートを譲ってしまう。



「…次は負けない」

「ん、頑張って」



それでもあたしは諦めずにそう言うと、また試合を開始させた───…。




……………




「立てる?」

「…っ、」



そして、それからもうどれくらいの数の試合をしただろうか。

相変わらずシュートを決めることができずに、ただ体力を奪われ床に崩れるあたしに、健がそう問いかけてきた。

その言葉に、顔を上げると…健の肩の向こうにある時計が視界に入る。


……21時まで、あと15分。