健はそう言って、あたしにキスをして…。
それを避けたら首筋にもキスをされた。
あたしはあの時翔太を完全に裏切ってしまったんだ。
抵抗はしたけれど、密室の倉庫の中で二人きりだったし。
まともに逃げることも出来なかった。
あれから何回も健にキスをされて、そのうちにやっと翔太が助けに来てくれたんだけど…。
「っ…あれは、違うから!」
あたしはその時のことを思い出すと、健に言った。
「あれは別に、健のことを受け入れたわけじゃないし、逃げらんなかったから仕方なかったっていうか…。
あたしはっ…あたしはずっと翔太のことが好きだもん!健のところには行かない!」
あたしは目の前の健にはっきりそう言うと、やがていたたまれなくなってその場を後にした。
「…、」
だけど一方の健は、もう何も言葉を発しない。
そんなあたしの背中を黙って見送っているだけで…
「翔太!」
「!」
その時タイミングよく電話が終わったらしい翔太にあたしが声をかけると、
心なしか、どこか表情の暗い翔太があたしの方を振り向いた。
「…あ、世奈ちゃん」
「電話終わった?帰ろ、」
「うん」
そして、翔太の本音が見えないまま…兄貴との問題は無事に幕を閉じた。
…────はずだった。

