こんな言葉を口にしたのは初めてだから、恥ずかしくて翔太をまともに見ることが出来ない。

あたしが顔を真っ赤にしてうつ向いていると、そのうち翔太が目の前までやって来て言った。



「…本気?」

「うん、」

「明日のことが不安だから、とかじゃないよね?もしそれだったら抱けないよ、」

「!」



翔太はそう言うと、あたしの顔を覗き込んでくる。

その瞬間目が合った翔太に、本当に「明日が不安だから抱いてほしい」と思っているあたしは気まずく目を逸らした。

だけどそんなあたしを、翔太が優しく抱きしめてきて言う。



「…僕は、世奈ちゃんのことが大切だから、傷つけたくないんだよ」

「!」

「明日のこと、自信がないわけじゃないけど…もしそうなるとしたら、今ここで僕に遠慮なく抱かれて、傷つくのは世奈ちゃんだよ」

「!」

「…もういいから、今日は寝よ?その代わり、世奈ちゃんの気が済むまでずっと抱きしめていてあげるから、」



翔太はあたしに優しい口調でそう言うと、あたしの手を引いてベッドに上がった。

そして今まではあたしに背を向けて寝ていたのに、今日はその言葉通り向かい合って正面から抱きしめてくれる。



……こんなに優しくて、こんなにあたしのことを考えてくれる彼氏、今までいたかな。

やっぱりあたしは、翔太がいい。

翔太があたしの隣にいてくれれば、それだけで幸せ。


あたしはそう思うと、翔太の腕の中で自然と夢の中に入って行った。




「…おやすみ、世奈ちゃん」



そして、そんなあたしに翔太がそう呟いて、優しくキスをしてくれていたことは、あたしはもちろん知るよしもない────…。