「あ、でもね、お父さんは九州に住んでるし、昨日たまたま帰って来てそう言われただけなんだけど…」

「…」



だって、兄貴が…



「…でも、お父さん以外の周りの人(兄貴)も“ダメ”“別れろ”ってうるさいし」

「…」



兄貴が、



“一回俺に紹介せぇ”

“そんなにええ奴なら見てやろうやん”



…そんなこと言い出すんだもん。



「それにね、“健の方が安全だ”とか言い出して、“健と結婚してくれるなら安心出来る”って言われたの」

「!」

「…翔太だって、そんなの嫌でしょ?」



どこか表情を曇らせている翔太の目を見てそう言えば、翔太はあたしの頭にやっていた手を、そのままあたしの肩に回す。

そして翔太の返事を待つあたしを抱きしめると、翔太は静かにあたしに言った。



「それは、嫌」

「…」

「相沢さんにだけは、世奈ちゃんをとられたくない」



翔太はあたしの耳元でそう言うと、より強くあたしを抱きしめる。



「!!じゃあ、」



その翔太の言葉にあたしが期待すると、翔太は優しくあたしに言った。



「…うん。世奈ちゃん、僕んトコおいでよ」

「!!」

「ずっと一緒にいよう、」



翔太はそう言うと、あたしに優しいキスをした。



…ただ、あたし達は知らない。


そんなあたし達の話を、“ある人”が聞いていたことを…。