あたしがそんなことを思っていると、翔太は何やら制服のポケットから携帯を取り出した。



「…?」



そして何をするのかと思っていたら、翔太は何故かちょっとだけ携帯を弄りだす。

…どうやら「駆け落ち」の意味を確認しているらしい。




“駆け落ち(カケオチ):結婚を許して貰えない男女が、親に黙って二人で同棲すること。”



「…だ、だよねぇ…」



そして翔太はそれを見て独りそう呟くと、携帯を再びポケットの中に仕舞った。



「…ダメ、かな?」



覚悟はしていたけど翔太のその微妙な反応に、あたしは不安を覚えながらそう問いかける。



「いや、ダメっていうか…」

「?」



だけど翔太は少し困ったようにそう言って頭を掻くと、心配そうにあたしに言った。



「っていうか世奈ちゃん、こないだも“家出した”とか言ってたじゃん。何か家で嫌なことでもあるの?」

「!」



翔太はあたしにそう聞くと、あたしの顔を覗き込む。


…別に、嫌なことがあるわけじゃない。

だって兄貴は優しいしイケメンだし大好きだもん。


だけど…



「…別れなさいって」

「え?」

「昨日、お父さんに翔太と付き合ってることがバレちゃってさ、“別れなさい”って怒られた」

「!」

「あたしは絶対に別れたくないのに…」



あたしはそう言うと、翔太の肩に頭を預ける。

そしたら翔太は戸惑い気味にあたしの頭に手をやって、



「…そっか」



沈んだ声で、そう呟いた。