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世奈 side



翌朝。

あたしは学校に来るなり、翔太を誰もいない屋上に呼び出した。



「どうしたの?」



翔太はあたしにそう問いかけると、ここに来る途中に自販機で買った「イチゴ・オレ」を一口、口に含む。

そんな翔太に、あたしは内心ドキドキしながら勇気を出して言った。



「…翔太、」

「うん?」





「あたしと駆け落ちして」





あたしがそう言うと、翔太は一瞬表情を強張らせて黙り込んだ。

でも、そうなっても仕方ない。

だってそんなことを言われるなんてきっと予想もしていなかっただろうから。


そして、しばらく黙っていたかと思うと、翔太はゆっくり口を開いてあたしの言葉を復唱した。



「…か、駆け落ち…?」

「うん、駆け落ち」



翔太はあたしが頷くのを見ると、あたしから戸惑うように視線を外す。



困らせてごめんね。

でも、それしか思いつかなかったの。


だって、どうしても翔太と兄貴を会わせたくないから。