「!…世奈ちゃんっ、」
翔太はあたしの存在に気が付くと、嬉しそうな笑顔を浮かべてあたしの傍に駆け寄ってくる。
そして、「会いたかった…」とあたしを思い切り抱きしめると、そのまま優しくあたしの頭を撫でた。
…こんなに愛されてるのに。
健と一緒にいたあたしは、やっぱ最低だよな。
心の中でそう思いながら何度か翔太とキスを交わしていたら、また翔太が抱きしめてきて言った。
「…僕さ、やっぱダメみたい」
「え、」
ダメって…?
「世奈ちゃんが傍にいないと、嫌なこと考えちゃって不安になるの」
翔太はそう言うと、より強くあたしを抱きしめた。
その言葉に、あたしはほっと胸をなでおろす。
…なんだ、一瞬「別れよう」って言われるのかと思った…。
そう思って安堵の表情を浮かべていると、やがて何かに気が付いた翔太があたしの体を離して言った。
「…ね、世奈ちゃん」
「え、」
「その上着、男物じゃない?」
そう言って、凄く不安そうにあたしを見つめる。
その問いかけに正直に頷くのは怖かったけど、あたしは「そうだよ」って翔太の目を見て言った。
「…うん、男物」
「何で…」
「実はあたし、今日家出しちゃって…」
「!」
「健の家に押しかけて、さっきまでずっと健の家にいたの」
あたしがそう話すと、翔太は黙って下を向いてしまう。
「いや、でも翔太が不安に思うようなことはなくって!
確かにキスされそうにはなったけどちゃんと拒んだし!
健だって39度の熱だしてるから、夕方から夜にかけてはずっと健の看病してたんだよ!」
「…」
「親の人も急用でいないみたいだったから、それは傍にいてあげないと可哀想でしょ?」

