その問いかけに、思わず背中がゾクッとする。



「な、何してるのって…?」



あたしが声を震わせながらそう聞いたら、電話の向こうで翔太が言った。



「メール、送ってもなかなか返信来ないから。どうしたのかなぁって思って」



その翔太の言葉に、あたしはほっと胸をなでおろす。

…なんだ。健にキスされそうになったのがバレたのかと思った。

さすがにそんなわけないよね。


そう思いながら、「ちょっと忙しかったんだよ」って口を濁らすと、その瞬間…



「!!」



背後から健があたしを抱きしめてきた。


その突然の行動に思わず声を出しそうになったとき、それを遮るように翔太が言う。



「忙しかったって?何してたの?」

「えっと…お風呂入ったり、皿洗ってたり…」



…うん。それは嘘じゃない。確実に。

だって実際そんなことしてたし。


そう思って翔太の次の言葉を待っていたら、健があたしの首筋に顔をうずめてキスを落としてきた。



「!!ちょっ…」



そして思わずそんな声を出してしまった瞬間、健が素早く片手であたしの口を塞ぐ。



だけど…。



「…世奈ちゃん?」



電話の向こうにいる翔太が、不思議そうにあたしの名前を口にした。



「どうかしたの?」



翔太のそんな問いかけに、あたしは健の手が口から離れたあと笑って言う。



「あ、大丈夫。虫がね、手の甲にいたから…ちょっとびっくりしただけ」

「…そう、なんだ」



「(虫と一緒にすんなよ…)」