健は、最初からあたしにキスとかそれ以上のことをする気なんてなかったんだ。

ただふざけてやろうとしたつもりなのに…



「どういうことかちゃんと教えて、世奈」

「…っ、」



あたしが、避けようとしなかったから…。



「ごめんなさい…」



あたしが沈んだ声でそう謝るけど、納得がいかないらしい健は、



「いや、謝ってほしいわけじゃなくて」

「…」

「俺はお前の本当の気持ちが知りたい」

「!」



そう言って、うつ向くあたしを真っ直ぐに見つめた。



「ほ、本当の…気持ち…?」

「うん。なんで拒まなかったの?」

「…」



そう聞いてくる健の視線に耐えられず、あたしはなかなか顔を上げることが出来ない。

そんななか、あたしはやがて健を見れないまま言った。



「…避けられなかったの」

「え、」

「身体が動かなかったっていうか…」



あたしがそう言うと、健は「どういうこと?」って聞いてくる。

だけど、それはあたしにもわからない。

だってさっきは本当にただ避けられなくて…。


そう思ってあたしがもう一回謝ろうとしたら、それを遮るように健が言った。



「じゃあ、それってつまり…」

「?」

「俺とキスとか…そういうことをするのは構わないって、世奈がそう思ってるって受け取っていいの?」



健のその問いかけに、あたしは…



「………そういうわけじゃない、けど」



そう言って、凄く曖昧な返事をしてまた健を困らせた。