その視線に一瞬目が離せられなくなったけど、あたしはすぐに我に返ると、言った。
「冗談。そもそも健は、風邪引いてるんだからそんな余計な体力ないでしょ。何バカなこと言ってんの、」
大人しく寝てな。
そう言おうとしたら、突如健の右手がスッとあたしの頬に伸びてきて…
「そういう体力だけは、ちゃんと残ってたりして」
「え、」
そう言って少しだけ微笑んで、あたしに顔を近づけてきた。
キスされる…!!
わかっているけど、何故か体が動こうとしない。
避けなきゃ!
そう思うのに…。
あたしがそのまま動かないでいると、キスをする直前で、健が至近距離で動きをピタリと止めて、呟くように言った。
「…なんで?」
「!」
「なんで、避けないの?」
そう言って、少し困惑しているような表情であたしから顔を離す。
え…避けないって…。
あたしが黙っていたら、健がまた言った。
「お前、今彼氏じゃない奴にキスされそうになってんだよ。そこは避けなきゃダメじゃん」
「!」
「何で受け入れようとしてんの。自分がキスされるってわからなかった?そんなはずないよね?」
そんな健の言葉に、あたしはなんて言っていいのかわからなくて、ただ「ごめんね」とだけ呟く。
…健を傷つけちゃったのかな。
だけどこの空気がいたたまれなくなって「ちょっとトイレ行ってくるね」って逃げようとしたら…
「逃げんなよ」
そう言って、腕を掴まれた。

