「お前ちょおこっち来い、」
「!」
兄貴はそう言うと、突如あたしの腕を掴んで裏口から店を後にした。
「なに!?」
びっくりしてあたしがそう声をあげると、周りに誰もいない路地裏で兄貴が言う。
「お前な、それで何人目や思てんねん」
「!」
「確か、その新しい彼氏で12人目やっけ?」
そんな兄貴の問いに、あたしは「…そうだけど」と呟くように頷く。
「やめとけ、やめとけ。どーせすぐ別れんねん。
ペアリングなんか買うても意味あらへんやんか」
「!!」
兄貴はそう言うと、険しい表情であたしを見る。
だけどやっぱり納得がいかないあたしは、もちろんその言葉に「わかったよ」なんて頷けるわけもなくて…。
「翔太は今までの人達とは違うよ!ちゃんと守ってくれるし優しいし、今度は絶対別れたりしないもん!」
何より翔太と「別れる」ことが凄くコワイあたしは、必死で兄貴にそう言った。
…兄貴まで「すぐ別れる」とか決めつけないでよ。
あたしがそう思っていると、兄貴が更に怒ったようにして言う。
「お前な、それ毎回言うてるセリフやん」
「!」
「いっつも“今は違う”“今度こそ”って…。わかるやろ?最後に傷つくのはお前やねん!」
「…、」
「せやから、もうやめとき。お前にはもっと近くにええ奴おるんやからさ、」