その直後、電話の向こうから機械音が流れる。


…き、切れた…。


あたしが携帯を耳に当てたまま呆然としていると、あたしを抱きしめたままの翔太が言った。



「…ダメだよ、世奈ちゃん」

「…?」

「今、世奈ちゃんは僕とデート中でしょ」

「!」

「…相沢さんの電話に出ないで」



そう言って、より強くあたしを抱きしめる。



「…でも、健に誤解されちゃっ…」



困るし。

そう言おうとしたら、その言葉を遮られた。



「誤解じゃないでしょ」

「!」

「本当に“お取り込み中”だったんだから」

「…」



そんな翔太の言葉に、あたしはそれ以上何も言えなくなる。

確かに、今あたしは翔太とデート中だった。

それなのに、あたしはさっき健に何を言おうとした?



“どこかで待ち合わせでもする?”



「…っ、」



…そうだよね。

翔太の言う通り。

あたし何やってんだろ。


そう思うと、あたしはやっと腕をほどいて身体を離してくれた翔太に言った。



「…ごめんね。今度から気をつける」