「やだ、翔太。あたしチューなんかしないからね」
そう言ってそっぽを向くけど、翔太はより強くあたしを抱きしめて言う。
「いいじゃん。僕ら恋人同士なんだし、」
「いや、だからってここじゃ…!」
こんな公の場でキスするなんて、絶対イヤ!
そう思っていたら、美桜がまた言った。
「世奈、翔太くんチューしたいんだって」
美桜は冗談のつもりなんだろうが、きっと翔太は本気だ。
そう思って尚も「イヤ」と言い続けていると、翔太が美桜に言った。
「困っちゃうよね~。ほら、僕の嫁チャン照れ屋だから」
そう言って、「ははっ」って笑う。
いや、“ははっ”じゃないし。
少しは恥ずかしいって気持ちを持って、翔太クン。
「…二人きりじゃないとチューは出来ません」
そう言ってあたしは、チラ、とだけ翔太に目をやってみる。
その瞬間超至近距離で目が合って、翔太の顔が遠慮なく近づいてきた、
その時…。
「世奈」
あたしは、突如教室の入り口の方から誰かに呼ばれた。
「…健」
そしてあたしを呼んだ主、健はあたしと目が合うと「ちょっと来て」と言って手招きをする。