それに気がつくと心臓が何故かバクバクいいだして、あたしは口を塞がれている健の手を退かして言う。
「だ、大丈夫だから!」
…何が大丈夫なのかは自分でもわからないけど、この心臓の音を健に聞かれたくはない。
あたしがそう言うと、健は…
「全然大丈夫じゃねーよ、静かにしてろ」
そう言って、あたしをより強く抱きしめた。
「!!…っ」
「…勇斗くんがマジでそこにいるんだよ。尾行だから、見つかったら困るんだろ?」
「…~っ、」
あたしにそう言う健の息が、かすかに耳を掠める。
その瞬間、あたしは昨日翔太に言われた言葉が脳裏を過った。
“あの幼なじみ君のこと、どう思ってるの?”
“奪われちゃったら嫌だなーって、思って”
「…っ、」
…い、いやいやいや。
でも、健が翔太からあたしを奪うなんてことは、考えられない。
だって健はあたしの恋を“温かく見守る”って言った。
だから今抱きしめられてるのも、きっと仕方ないことなんだ。
…わかってるのに。
「…健、離して」
「だめ。勇斗くんに見つかる、」
全然、そんな気がしないよ…。

