「・・・サヨナラ。渡。」あたしの言葉など届かなかった。いくら涙を流しても、会いたいと願っても、届くはずがなかった。
六年前のあたしの誕生日、五日前、両親が離婚。誕生日当日のあたしが生まれた時間1分前に、1本の電話が入った。「鈴木さんのご自宅でよろしいでしょうか。」そこでは、母が事故で即死したという内容が語られた。それからはあたしは母に捨てられたのだとおもうことにした。そうすると悲しみだけがちょうどいいくらいに残るから。
あたしの名前は鈴木陽菜。幼馴染みで同級生の逢瀬渡はあたしの家族のような存在。いつも笑っていて、とても優しくて常にあたしの目標だった。
そしてあたしがいじめられ始めて、そのときはじめて屋根裏があることを知った。毎日毎日あたしはまるでそこだけに住んでいるかのようにずっといた。でもいくらかくれても渡は必ずあたしを見つけてくれた。「学校行こ!」毎日明るく誘ってくれた。一緒に住んでいるおじいちゃんも、安心した様子だ。渡のひとつの行動でこんなにもあたしは、幸せになれるんだ。