「蒼山さんは」
みどりが声を発す。
「ん?」
「好きな人とか、彼氏いるの?」
「ううん。いないよ」
「黎人じゃだめなの?」
優しいんだね。
「あたし、あんまり人を信じられないんだ。如月のことはもう信じたいって思ってるけど。でも、まだ……まだ進めてない。こんなあたしなんかを好きでいてくれる如月を軽く決めたくない。だから、如月とは好きでもないのに付き合うなんてそんなことできないんだ。」
笑ってあたし。
如月見習って笑え。
「そっか………」
「ごめん、あたしたち、なんにも知らないで」
「ううん。いいんだよ。あ、早く戻んなきゃ。時間やばいよ」
あたしはため息をつく。
「あっ、やば!」
そう言ってトイレを出ていく二人。
あたしは二人の後にトイレを出て、二人の背中を眺め、方向転換した。

