「麻ー欧ちゃん。」
こいつは分かっていないらしい。
馬鹿なのか?
いや、馬鹿か。
「なあ、無視すんなよ~」
フラレた当てつけではないよう。
軽い。
「……ねー、黎人」
「ん?何。」
他のクラスメイトの女子が
如月に声をかける。
猫撫で声。
「蒼山さん、話したくないみたいだから、あたし達と話そ?」
なんでお前に決めつけられなきゃ
いけねーんだよ。
って思うけど、今んとこ助けられた。
と、思ったのに。
「ごめん。俺今、蒼山さんに話あんだわ」
いつもの軽い馬鹿っぽい声でも、
フッた時の切ない優しい声でもなく、
低い真面目な声。
あたしは如月の方を見ていないから
表情までは分からないが、多分笑顔。

