『…絵美ちゃん』



俺はポカーンとしている絵美ちゃんに近づき、絵美ちゃんのおでこに自分のおでこをくっつけた。


俺の首をちょっと傾ければ、キスできる距離。




『……え……』



絵美ちゃんの言葉を聞きながら、俺はユックリと首を右に傾ける。


あと、わずか数センチのところで、俺は止めた。




『…航汰くん…?』




『バーカ!
 男はみんなこういう生き物なんです!
 だから安易に男と近距離になっちゃダメなんです』



俺はそう言って、顔を離した。


離れていく距離、逆に絵美ちゃんの顔全体がしっかり見えてくるようになると、絵美ちゃんは驚いた顔に変わる。




『…え……今の…何…?』



『分かんない?』



『…えっと……』



『キスだよ』



俺の言葉に絵美ちゃんの目はしどろもどろ。



『…えっと……』




『絵美ちゃんさ、無防備すぎ!
 ただの教え子でも、俺だって男だよ?』



『……え……』


俺の言葉に絵美ちゃんは頬を赤く染めた。


その姿が可愛らしくて、本気で絵美ちゃんにキスしたいと思った。




『じょーだん!
 俺、絵美ちゃんのこと、そういう対象で見てないから安心してね』


俺はゆでダコみたいに真っ赤になってる、そんな純朴な絵美ちゃんを見ながら、そう言った。




『………だよね……。
 教え子と先生だし…もう、驚かさないでくれる…?』




言葉もしどろもどろ。



もしかして…



『絵美ちゃんって、キスしたことないの?』


俺がそう問いかけると、絵美ちゃんは泣きそうな顔になる。




え…?




この反応って…マジ、なの?







『……ないよ……なんか悪い…?』


そう半泣きで、でも俺をしっかりにらみつける絵美ちゃんに俺は吹き出してしまった。




『…別に、ププ…』


『…笑わなくても…だってキスとか…そういうのって…本当に好きな人とするものじゃない…』



今時に見ない、古風な女、見つけた。



『アハハ』



俺は、中学生に笑われて困ってる絵美ちゃんを見ながら、でもホッとした。



俺のこと中学生のガキだと思ってるくせに、そんな大学生の彼女はまだキスもしてなければセックスもしたことがない生娘なんだから…。





俺、本気で絵美ちゃんのこと、落としてみようかな?





『もー!!
 教え子が先生を馬鹿にするんじゃありません!!』


もう絵美ちゃんは泣いてるけど。




今は教え子と先生。



でも、絶対に絵美ちゃんの心も体も、俺がもらう。


絵美ちゃんの一番は全部、俺がもらう。




覚悟しとけよ、絵美?