好きでした。


好きで、好きで。



絵美ちゃんを意識し始めた頃は、もっと強気だった。

絵美ちゃんのファーストキスも、初めての相手になるって、そう強気だった。



でも、絵美ちゃんから“好きな人がいる”、そう言われた日から、俺に強気な気持ちがなくなってった、嘘みたいに。



好きで、好きで、


どうしようもなかったくせに。




それでも、あの人を想う、絵美ちゃんの涙は本物で。

あの人を想う、絵美ちゃんの想いは本物で。


そんな絵美ちゃんの本物に、俺の想いなんて太刀打ちできなかった。





本当は、行かせたくありません。

本当はこのまま、このまま…





でも、それでも、俺は、強かった頃の自分に戻りたいから。


絵美ちゃんに幸せになってもらいたいから。







『行け』



俺は、絵美ちゃんの手を引いて、立ち上がらせ、そして部屋から追い出した。






『…………』



階段を下りる音なんて聞こえない。


まだ、きっと、絵美ちゃんもこのドアの反対側にいる。



そう思うと、そこから離れなれなくて。



俺はその場に座り込んだ。








『……航汰くん……ごめんね………』



その言葉が聞こえて、階段を下りる音がする。





行け。


絵美ちゃんが一番好きな奴のところに。





届け。

絵美ちゃんの“好き”が、絵美ちゃんの一番好きな奴のもとに。





幸せに、なれ。

絵美ちゃんと、絵美ちゃんの好きな奴が、永遠に。
















『…………………………………絵美、好きだよ』