「颯?行こう?美恵さんたち待ってるよ。」

そう言ってドアの方に歩き出した実結を背中から抱きしめる。

「そ、颯!?」

なんでだろう。

こうしたくてたまらない。

腕の中でびっくりして固まっている実結。

「どうしたの?」

「別に、なんかこうしたくなった。」

なぜか素直に言ってしまう。

恥ずかしさよりも実結に触れたい思いのほうが優っていて。

「颯、今年1年間ありがとうね。」

そう小さく呟くと俺の方へ顔を向けた。

「来年もよろしくね!」

来年、それは初めて俺達が離れて別々の道に進む。

不安がないと言ったら嘘になる。

だけど、俺達なら大丈夫。

そう思えるのは実結だから。

実結とならどんなに遠くに離れていてもやっていけるって思う。

俺は正直、恋愛なんてよくわかんねえし、女子の気持ちとかにも敏感じゃない。

実結にだってたくさんつらい思いをさせたし、これからももしかしたらさせてしまうこともあるかもしれない。

それでも俺の隣にいてくれる実結。

大切にしたい。

一番、大切なんだ。

来年も、再来年も、多分ずっと。