正直、嬉しかった。

こうして少しでも長く実結といられることが。

ほんとに俺は勝手なやつだ。

チラッと実結の横顔を盗み見る。

なんか痩せたよな。もともと細かった顎がさらに細くなったような気がする。

手とか足とかも、細くなった気がする。

俺のせいだ…

「あっ、みて!颯!海だよ!」

窓の外を見ていた実結が目をキラキラさせてこっちを急に振り替えるから。

鼓動がどんどん早くなっていく。

『次は星見ヶ崎ー星見ヶ崎ーお降りの方は右側のドアですー』

「颯、ここで降りるよ!」

ここって星見ヶ崎?

どこかで聞いたことがあるような…

あ…もしかして…

「…思い出した?小さいとき、来たことがあるの。」

「うん、思い出した。」

そう言うと実結は嬉しそうに笑った。



あれは確か、小学一年生のとき、夏休みに実結の家族と俺の家族で旅行に出掛けた。

その行き先が星見ヶ崎だった。