夏の大会で引退なんだから、もう少し気を引きしめてもらわないと困る。

一応副部長なんだから。

「そういえば、明日颯、誕生日じゃん!おめでとう!」

明日な?完全に浮かれてる。

「実結ちゃんになにもらうんだ?あ、もしかして実結ちゃんをもらっちゃうとか?うーわ、嫌らしい!」

は?

なにいってんだ?

「俺がもらうのは実結の数学の90点以上の答案だよ。」

「はあ?なんだよ、それ!?」


あれは一週間前のこと、三年生になってからすでに二回目の実力テストの5日前。

いつものように部活が終わり、二人で帰っていたときに実結が言った一言。

「ねえ、来週の水曜日、颯の誕生日だよね!なにかほしいものある?」

目をキラキラさせる笑顔の実結。

「そういうのって俺に直接聞いていいの?」

そういえば来週が自分の誕生日だってことも忘れていた。

「サプライズもいいけど、本当にほしいものあげたいって思ったから…で!何かある?」

ほしいものか…県大会のシード…ってあほか!

昔からあんまり物欲みたいものがないんだよな。