泣くだけ泣いたら無性にお腹が空いて”ぐう~”と高らかに鳴く腹の虫。

「普通、失恋したら食欲減退するんじゃないの?」

自嘲気味に自分でツッコミを入れてからご馳走出来なかった料理を食べたら、久しぶりに作ったのにロールキャベツはやたらと美味しくていつも以上に食べ過ぎた。

「やっぱり、一緒にバイトするのは辛すぎるなぁー」

誰に聞かせる訳でもなく呟いた言葉は私の本心だったから、悠斗君に言われるまでもなくバイトを続ける気にはなれなかった。

シフトの関係もあってバイトを辞めるなら早い方が良いと思い立ち「一身上の都合で辞めさせて下さい」と言うために、失恋の翌日だと言うのにバイト先のカフェに行くことになってしまった。

クリーニング済みの制服を店長に直接渡そうかロッカーに入れて置こうか悩んでいたら、スッタフルームから人の話声が聞こえてきた。

「昨日こいちゃんの家に行ったんだろ…で、もうやったのか?」

茶化すような厭らしい聞き方をしているのは同じくバイトの小林君。

「こいちゃん…顔は童顔だし小さくて細いのに胸は大きいよね」

小林君は『セクハラだろ!』って発言を平気でするし、視線は常に胸って感じの人で苦手だったからあまり近付かないようにしていて悠斗君とプライベートな話をするような間柄とは全く知らなかった。