あの夜から一月後の花嫁控え室……


「きゃぁああーーーどう?私の最高傑作」この大袈裟なリアクションを見せるのは私のヘアメークを担当してくださっている、陽菜さん(本名は中井陽輔さん)

「・・・・・」

無言で鏡に向かい項垂れそうになっている私に大層気分を悪くされたようで先程の裏声が何処へ消えたのか、急に野太い声で私を威嚇し始める。

「こんなに可愛くしてあげたのに……どこに文句があるのよ。言ってみな」

これがコスプレとかなら間違いなく可愛くして貰って感謝、感激するところだろうけど……

今日は私の人生最大のイベントと言っても過言ではない。

結婚式当日の花嫁のはずだ。

幾ら身長が143cmのミニサイズでもこのドレスはいかがなものでしょうか?

よく言えばリアルフランス人形風でロリータファッション好きには堪らないでしょうが、私は本当に極々普通のドレスで構わなかった。

身長が高くないと似合わない長いトレーンのドレスなんて望まないから……

せめて普通に花嫁に見える位にはなりたいって思うのは贅沢かな?

「さっきから何ブツブツ言ってるの?これは撮影の・た・め・な・の。ぜ~んぶタダなんだから仕方ないでしょ?諦めなさい。はい。これ持って……」急に手渡されたのがテディベアのぬいぐるみ。

一体は花嫁なのか?ウエディングドレス着ていて、もう一体はタキシードを付けた花婿らしい。

二体のテディベアを胸に抱きしめた私が鏡に映り込んでいる姿は……

泣きたいくらいに見事にマッチしていて余計にガックリと肩を落とす。