心からホッとして微笑みかける私に旭君は「あぁーもぉーこいちゃんは俺をどうしたい訳?」戸惑いの表情を浮かべながらボソリと呟いた。
「私は……旭君にもっと近付きたい。恋人らしいことだってもちろんしたい。う~ん。あれをデートと言っていいなら1回したね。何処でもいいから二人で出かけたいね?」わがままを言ってもいいの?そう思い嬉しくなる。
緩みきった顔を自覚しながら、これから二人でやってみたいことを素直に言ってみたのですが「ホント無自覚って罪だよな……」どうやら答えが間違っていたみたいです。
「こいちゃんを押し倒した事が母さんに知られた俺、勘当されるかも……あれで母さん凄く厳しいんだよ」旭君がそう終えるや否や……
「当然でしょ?人様の大切なお嬢さんになんて振る舞い。そんな息子に育てた覚えはありません」二人きりだと思っていたリビングに響き渡るマリアさんの声にギョッとして恐る恐るリビングの出入口に視線を向けると買い物カートを従えたマリアさんが仁王立ちしている姿が目に飛び込んでくる。
いつも聖母みたいな穏やかな微笑みしか目にしたことのない私はその表情にかなりのショックを受けた……だってお顔が般若のお面みたいなんだもの。
私たちは成人もしている大人の男女なのに、まるでイチャついているところを親に見つかった中学生みたいだ。
取り敢えず今できる事をしようと考えて、旭君と距離を取って座るために腰を浮かせたのに……
ガシッと腰を掴まれ離れることを阻まれてしまった。
それから旭君は私の左手を掴むと「か、母さん。こ、これ見て……」とまるで葵の印籠を掲げるようにしてマリアさんにエンゲージリングを示している。


