「それは俺が心配だから……」どこかきまり悪そうな旭君。
声にしたつもりは無かったのに、ショックを立て続けに食らって体の機能が誤作動を起こし、思いがダダ漏れになっているらしい。
「旭君。一体何が心配なの?」ホントに分からなくて訊いたのに、今日の旭君はやたらと怒りっぽいのだ。
「何が心配なのじゃない。お父さんの部下って人……絶対こいちゃんのこと狙ってた」
「堺さんとはあの日初めて会ったのにそんな訳ないじゃない」
旭君が嫉妬してくれたのも何だか嬉しくてふふって笑っていったら、ほっぺをムニュウと掴まれた。
「いたいはなしてー」
「こいちゃん。ホントに罪作りだよなぁー」
私が旭君に群がる女性たちの心配をすることはあっても、その逆は考えられないのに…
「同じ日に2回も『旭君は友達です』って言われた俺の気持ちが分かる?」
「うん」と頷き切なくなる、その気持ちを一番理解しているのは私だから。
「でもそれってさ、俺が先に言い出したことだって気が付いたんだ。
ちゃんと告白するまでけじめを付けるつもりで悪気なんて無かったけど……
皆にこいちゃんは友達だよって紹介する度に、こいちゃんが切なげな表情を浮かべているのに気が付いてた筈なのに、自分が言われてみて初めてこいちゃんの気持ちが分かったんだ。
二人の間に距離を感じるって言えばいいのか?
拒絶された気分だって言えば言いのか?
いい気分じゃないことは確かだった。気付いてあげられなくてごめんね」
「罪作りなのは、間違いなく旭君だから」
はちみつよりも甘い笑顔と謝罪の言葉が今まで流した悲しみの涙を浄化してくれる。
照れくささに可愛げのない言葉を口走る私は、この芸術的な完成度を誇る男性を独り占めできる贅沢に本当に慣れることがあるのでしょうか?


