旭君が何を考えているのか全く理解出来なくて、知らぬうちに溢れ出た涙が頬を濡らす。
そして零れ落ちた涙が旭君の腕にも滴となってポタリと落ちた。
「こいちゃん?」声を漏らさず泣いている私に呼びかける旭君。
先程とは違い声に戸惑いを感じるけど、それでも私を離してはくれない。
私の体をゆっくりと回転させた旭君は、自分の正面へと向きを変えその視線で穴が開きそうな位に私の表情をつぶさに観察している。
とても真剣な表情から一変、心をとろけさせる極上な笑顔を旭君は私に向けた。
トクトクトク高鳴る心臓。驚きの余り一瞬にして涙も止まってしまった……
でも旭君が一体何をしたいのか全く理解出来なくて最早パニック寸前の私を救ったのは……
意外にも坂口さんの声だった。
「私たち帰りたいんだけど……二人とも邪魔だから、そこ退いてくんない?」
いつもより低めの声が怒りを顕著に表している坂口さんに、慌てて壁際へと移動して通路を開ける私と旭君。
『美人が怒ると迫力がある』を実証する人が此処にも居た。


