「ご結婚おめでとうございます。私もお二人の幸せにあやかりたくお邪魔しちゃいました……」卒のないお祝いの言葉の後に旭君にチラリと視線を向けて秋波を送る坂口さん。
「急だったのでこんな物しか用意出来なくて……」ニッコリと微笑みながら彼女がカンナちゃんに手渡したのは可愛らしいブーケの花束だった。
「うわぁーカワイイー。ありがとうございます」カンナちゃんはブーケから遼君に視線を移し満面の笑みを浮かべて嬉しさを露わにしている。
この店に来るまでカンナちゃんと遼君が入籍したことを全く知らなかった私は、坂口さんの心遣いに感謝しながらも気の利いたプレゼントの一つも用意出来なかったことがとても悔しくて仕方ない。
『全てにおいて彼女には敵わないのかな?』
……そんな思いから心が塞いでいく。


